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2008年02月20日

標準ガーバーと拡張ガーバー

(旧プロテル探検隊からの加筆/転載)

PCB 設計は回路設計の最終工程ですので、設計が終わった後そのデータから直接製造データを出力します。いわゆる CAM 出力と呼ばれる工程があり、アートワークフィルムを作成するためのガーバデータと、穴あけのための NC データの出力を行います。

この、PCB のアートワークフィルム作成工程は印刷物の場合と良く似ていますが、データの受け渡しにはガーバという PCB 独自のフォーマットが用いられます。このガーバーフォーマットは標準化されてはいるものの、ある程度の自由度が許されていますので、書き出し/読み込み時の条件設定の不一致によって、正しいアートワークイメージが再現出来ない場合があります。このため設計側と製造側との間での正しいデータの受け渡しのためには、いくらかの予備知識が必要になります。

そこで、このガーバーフォーマットがどのようなものであるかについて、簡単に紹介させていただきます。

標準ガーバーと拡張ガーバー
(DesignWave誌 2005年 4月号からの加筆/転載)

ガーバーは、PCB のアートワークフィルムの作画に用いられるグラフィック・フォーマットです。もともとはフィルム作画機(フォトプロッタ)のメーカである Gerber 社で開発され社内規格として使用されていたものです。これがデファクト・スタンダードとして広く普及したため、1979年にEIA (米国電子工業会)で RS-274D として規格化されました。現在、量産用の PCB フィルム作成には必ずと言ってよいほど、このガーバーフォーマット(拡張されたものも含む)が用いられています。

この RS274-D ガーバーフォーマットは、アートワークを「点」と「線」の組み合わせだけで表現します。RS-274D ガーバーデータには作画するすべての「点」と「線」の座標が示されています。しかしこの「点」と「線」の形状とサイズの定義は含まれておらず、そのかわりに D コードと呼ばれる作画ツールの番号が示されています。このため実際に作画する場合には、このDコードを作画に使用するツールの形状とサイズに置き換える必要があります。

初期のフォトプロッタでは、アパーチャと呼ばれるシャッターのようなもので光束を制御して、作画の形状とサイズを決定していました。このため作画ツールをアパーチャと呼び、そのサイズを示すリストをアパーチャ・テーブルと呼んでいます。このしくみはペンプロッタに置き換えて考えるとわかりやすいと思います。アパーチャはプロッタのペンに相当し、そのペン先の形状と太さがアパーチャ・テーブルに示されます。

この RS274-D で作画する場合にはガーバーデータだけでなく、必ずこのアパーチャ・テーブルが必要になります。また、RS-274D ガーバーには面を表現する手段がありませんので、ベタで塗りつぶす部分には、多くの「線」を並べなくてはなりません。このため、基板の配線パターンが単純であってもベタエリアが多いとデータ量が激増します。

このように、RS-274D ガーバーにはいくつか不便な部分があるため、その改良版として、ガーバー RS-274Xフォーマットが開発されました。これには、アパーチャ・サイズの定義が含まれていますので、別個にアパーチャ・テーブルを用意する必要はありません。また、「点」と「線」だけではなく「面」の記述が可能ですので、データ量が少なくてすみます。この RS-274X はEIA規格ではなくガーバー社(Barco Gerber Systems Corporation)の社内規格です。しかしデータの受け渡しが簡単になることから、現在では RS-274D よりも RS-274X のほうが多く使われるようになりました。

RS-274X は RS-274D を改良したものですので、両方ともガーバーフォーマットには違いありませんが、混同を避けるために RS-274D を標準ガーバー、RS-274X を拡張ガーバーと呼んでいます。

ガーバーデータを再現する場合には、ファイル読み込む前にそれが標準ガーバーなのかそれとも拡張ガーバーなのかを判別する必要があります。ガーバーファイルを受け取った時にアパーチャ・ファイルが添付されていなければ、それは拡張ガーバーのはずです。しかし手違いで添付されなかったという場合もありますので、一度ファイルの中身を覗いてみるとよいでしょう。通常はASCIIファイルですので、テキストエディタで読むことができます。

拡張ガーバーの場合には、先頭付近に「%」で区切られたパラメータが何行か並んでいるはずです。これは、拡張ガーバー独自のものですので標準ガーバーにはありません。もしこれがなければ、標準ガーバーですので、相手に対してアパーチャ・ファイルを請求することが必要です。

274x.jpg
拡張ガーバーでのデーターの受け渡しはトラブルが少ないのでフォーマットに関する知識はあまり必要ありません。しかし標準ガーバーを使う場合にはデータを正しく再現するために、多少の知識が必要になる場合があります。以下のページでガーバーフォーマットが詳細に解説されていますので、一度ご覧になることをお奨めします。

長野県情報技術試験場 - ガーバーフォーマットとガーバー支給時の注意点
http://www.techno-qanda.net/dsweb/Get/Rendition-14166/

長野県情報技術試験場 - 技術の広場 ガーバーフォーマット [解説]
http://www.nagano-it.go.jp/joho/kaisetsu/gbf_s.pdf

長野県情報技術試験場 - 拡張ガーバーフォーマットの解説
http://www.nagano-it.go.jp/joho/kaisetsu/ext_gerber.pdf

Barco Gerber Systems Corporation Engineering Services Department
RS-274X Format User’s Guide Part Number 414-100-014 Rev C
September 21, 1998

http://ohm.bu.edu/~hazen/my_d0/std/rs274xc.pdf

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2008年02月13日

カスタムライブラリの作成

アンビルコンサルティングでは毎日多くのお問合せをいただきますが、なかでも多いのが部品ライブラリの作成や管理を効率化したいというご相談です。そこでオルグシステムズの TechLIB-SCH をお奨めするわけですが、これで万事解決するかというと、そうとはいかないのが現実です。

この TechLIB-SCH には国産部品を中心に 50,000 個以上もの回路図シンボルが格納されています。しかし市販されている電子部品の全てがカバーされているわけではありませんので、必要な部品が含まれていないということが多々あります。また部品数が増大するに従い、目的の部品を見つけるのに時間がかかってしまうという弊害も出てきます。

そこで、このようなライブラリ環境を補完するため、オルグシステムズではカスタムライブラリの作成をお受けしています。このサービスでは、皆様にご指示いただいた通りのシンボルライブラリを、一つずつていねいにお作りいたします。

カスタム品ですので仕様と価格については、事前に打ち合わせさせていただくことになりますが、目安としては 1ピンあたり 45 円からで、最小発注単位は 30 個(500ピン)となります。またパラメータフィールドに書き込まれる属性は、"Manufactuer" "Manufactuer P/N" "HelpURL" となります。

必要なライブラリを手っ取り早く手に入れたい場合には、従来よりご利用いただいているTechLIB-SCH BASIC に合わせ、このカスタムライブラリ作成サービスをご利用ください。

また、TechLIB-SCH 最新仕様が、オルグシステムズのホームページで紹介されていますのでご覧下さい。 
http://www.techweb.co.jp/ORG_Systems/index.htm

TechLIB-SCH には、BASIC と LEGACY があり、BASIC は Altium Designer 用で、 LEGACY は Protel 99 SE 以前の製品に合わせた仕様になっています。弊社が販売しておりますTechLIB-SCH ad はTechLIB-SCH BASIC と同じものです。

オルグシステムズのサイトに TechLIB-SCH の絵柄サンプルがありましたので、その一部を紹介します。それぞれのシンボルが大変ていねいに作られています。
絵柄サンプルのダウンロード
http://www.techweb.co.jp/ORG_Systems/Sample_view.html
techjib_con.JPG

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2008年02月12日

CAMtastic の操作性

(旧プロテル探検隊からの加筆/転載)

Altium Designer のリバースエンジニアリング機能により、ガーバーデータを PCB データに変換して修正を加えることができますが、もうひとつの方法として、CAMtastic の豊富な編集機能を使ってガーバーデータのままデータを修正することもできます。

その際に問題になるのが CAMtastic の操作性です。たいていの人はすぐに「CAMtastic はちょっと変」と感じて、使うのをあきらめてしまうのではないでしょうか?

Altium Designer の回路図エディタや PCB エディタは、アルティウムの開発ポリシーとして Windows 標準に準拠した操作性をそなえています。しかし CAMtastic ガーバエディタは、企業買収によって外部から取得したツールであることから、Windows 標準に準拠した他のアルティウムのツールとはかなり使い勝手が異なります。

そこで部品(CAMtastic ではパッド)の移動を例にとり CAMtastic の操作のポイントを説明したいと思います。

まず Protel PCB ツールの場合には、コマンドを何も起動しなくてもマウスのカーソルを部品上に移動し左ボタンで部品をつかめば自由に部品が動きます。いわゆる Windowsでいうところのドラッグ&ドロップにより、簡単に部品を移動できます。

しかし CAMtastic ではこのようなわけにはいかず、これと同じ操作をしても全くなにも起こりません。CAMtastic ではドラッグ&ドロップはサポートされていませんので、パッドを移動させるには次のような手順が必要になります。

(1) [ Edit ] - Move コマンドを起動し、対象を選択する
メニュ体系自体はWindows 標準が守られていますのでこの操作に戸惑うことはないでしょう。しかしこれでパッドをクリックしてもパッドがハイライトするだけで、パッドを動かすことはできません。実は CAMtastic では [ Edit ] - Move のコマンドによって最初に有効になる機能は、部品の移動ではなく移動対象のセレクトなのです。コマンドを起動した直後カーソルが四角形 [ □ ] に変化します。CAMtastic ではまずこの状態で、マウス左ボタンのクリックにより動かしたいパッドをセレクトします。

(2) マウスの右ボタンをクリックする
マウスの右ボタンをクリックすることによりセレクトの機能が終了します。しかしCAMtastic では、単に機能が終了するだけでなく次の機能が有効になります。これでようやくパッドが動くと思いきや、ところがどっこい、さらにまだ前段階の操作が必要です。

(3) マウス左ボタンのクリックにより始点を決める
ここまでの操作で、セレクトされた部分が四角形で囲まれ、マウスのカーソルは十字 [ +] に変化しているはずです。この状態で移動の始点を指定します。[終点] - [始点] の距離をセレクトされたオブジェクトが相対移動しますので、始点をどこに指定してもかまいません。しかし単独のパッドを動かす場合には、パッドのセンターを始点にするのが一番分りやすいはずです。マウスの左ボタンのクリックにより始点を決めます。ここまできてやっとパッドを動かすことができます。

(4) マウスの移動によりパッドを目的地まで移動して確定する
マウスを動かせばパッドが移動しますので、目的地まで移動させたあとマウス左ボタンのクリックで終点を決めます。

これで移動が完了します。さらにマウスの右ボタンをクリックすると (1) の状態に戻りコマンドを再起動しなくても、別のオブジェクトを移動することができます。

以上のように、CAMtastic では他のアルテイウムのツールとは大きく異なる操作が求められます。そこでこの CAMtastic の違いに戸惑うことがないように、要点を4つあげておきます。

・ ドラッグ&ドロップはサポートされていない
・ [ Edit ] - XXXX コマンドを起動すると、まずセレクト機能が有効になりその後、処理に必要な一連のコマンドが自動的に呼び出される
・ マウスの右ボタンを押すと機能が終了するだけでなく次の機能が始まる
・ 部品移動の場合にはセレクトされたオブジェクトが、指定した始点と終点の間隔を相対移動する

この操作体系は、ACT 社の ECAM がDOS 時代から用いてきたものに良く似ています。ECAM は PCベースのGerber エディタの草分けであり、長期にわたって販売されている製品ですので、CAMtastic でその操作体系が踏襲されたとしても不思議ではありません。また、これが使いやすいという評価もあります。アルティウムユーザとしては違和感を拭えませんが、とにかくこの違いを理解して慣れるしかありません。

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2008年02月10日

Altium Designerでガーバ編集

(旧プロテル探検隊からの加筆/転載。画像もそのまま再利用)

他の PCB-CAD で設計の終わったデータを Altium Designer に読み込んで修正したい場合があります。

Altium Designer は、OrCAD Layout、PADS、P-CAD の PCB トランスレータを備えており、これらの PCB データであればそのまま読み込んで編集することができます。しかし Altium Designer でサポートされていない種類のPCB データを読み込みたい場合には、トランスレータを使って Altium Designer のデータに変換することが必要になりますが、必要なトランスレータを簡単に手に入れることはできません。

そこでその代替として、ガーバー データを Altium Designer に読み込んで編集するととう手段があります。 そしてこれを行なう場合には、一旦 Altium Designer に内蔵されているガーバエディタ(CAMtastic)にガーバーデータを読み込み、それを Altium Designer のPCB データに変換するという手法を用います。アルティウムではこれをリバースエンジニアリングと呼んでいます。

Altium Designer の PCB エデイタにもガーバー入力機能がありますが、これは他社製品から出力したガーバーデータを読み込む能力を備えていません。このため Altium Designer の PCB エデイタでガーバー編集を行なう場合には、必ず一旦ガーバーエディタを経由してガーバーデータを取り込まなくてはなりません。

また、ガーバ編集というと言葉からは、ガーバー編集用の生産性の低いコマンドを使用した手間のかかる作業を想像しがちですが、この場合には使いなれた Altium Designer の PCB 編集コマンドが使えますので、小規模な変更であればさほど不便は感じないはずです。

以下にそのおおよその手順を紹介します。

(1) CAMtasticガーバーエディタに に Gerber と NC データを読み込む
CAMtastic の [ Files ] - Import コマンドを使用する。Quick Loard という一括読み込みの機能があり、これを利用すると基板を構成するファイルをまとめて読み込むことができる。

(2) ネットリストを抽出
レーヤ属性の設定、レーヤオーダーの設定、ネットリストの抽出という一連の作業を行う。

(3) CAMtastic のデータを Altium Designer の PCB データに変換
[ Files ] - Export - Export to PCB コマンドで Protel に データを送る

(4) Altium Designer に読み込まれた PCB データからビアを抽出して変換
変換された PCB データはランド部分は全てパッドになっており、ビアとの区別がない。このため、Find Similar Objects の機能を使ってビア部分を検出し、この部分をビアに一括変換する。

(5) Altium Designer の PCB 編集機能を使って修正
変換元データがガーバですので、そのままでは部品単位での移動はできない。このため部品の移動を行う場合には、[ Tools ] - Convert - Create Union from Selected Components コマンドを使ってパッドをグループ化する。さらにこのメニュー下部にある、Add Selected Primitives to Component でシルクをグループ化する。これら機能を使用すると、オリジナルの CAD データと同じように部品単位での移動が可能になる。
union.gif
さらに Altium Designer ではその豊富な機能を駆使して一旦読み込んだガーバーデータを、オリジナルのPCB データに近付けることができます。もしAltium Designer または、旧プロテルで描かれた回路図があれば、回路図と整合する Altium Designer の 完全なPCB データに復元することができます。この手順については DesignWave 誌の記事で詳細に解説してあります。 ただし冒頭2ページしか公開されていませんので、詳細をお知りになりたい場合には、アンビルコンサルティングまでお問合せ下さい。
http://www.cqpub.co.jp/dwm/Contents/0089/dwm008900390.pdf

しかし完全なPCB データへの復元にはかなり手間がかかります。簡単な修正なら(ガーバーエディタを経由して)単に ガーバデータを Altium Designer に読みこんだだけの状態で編集したほうが楽だと思います。

Altium Designer では比較的簡単にガーバーデータを読み込み、使い慣れた PCB 編集機能を使って修正することができます。「ガーバー はなにかと面倒」という先入観を捨てて一度この方法をお試しください。

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2008年02月08日

点と点とを線で結ぶ

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注: この記事は「アルティウムの知恵袋」カテゴリー「Protel P-CAD OrCAD PADS 他 PC-CAD今昔物語 」での最後の投稿です。すでにこの「アルティウムの知恵袋」は更新を取り止めており、このカテゴリーは「アルティウムの情報箱」の「Protel P-CAD OrCAD PADS 懐古録」に引き継がれています。
注2:さらにその後「アルティウムの情報箱」も終了し「アルティウムの日替り?情報局」のカテゴリ「ProtelProtel P-CAD OrCAD PADS などの懐古録」に引き継がれています。
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もうずいぶん前のことになりますが、私どもには以前 プリント基板の設計を生業としていた時期がありました。このプリント基板の配線というのはまさに点と点とを線で結ぶ仕事であり、何百何千もある「点」を前にして途方にくれた記憶があります。

そして今は皆様に CAD ツールを紹介する仕事をさせていただいたいているわけですが、これも同様に「点と点を線で結ぶ」仕事なのではないかと思うことがあります。そして、あらためてこの視点でまわりを見てみると、結ばれたくても結ばれない「点」が無数に点在していることがわかります。

アルティウムは1986年に最初のツールを世に送り出し、それ以後多くのCADツールを提供し続けてきました。その結果、現在では多くのバージョンのアルティウム/プロテルCAD ツールが混在して使われています。そしてこのことにより、新たに Altium Designer 6 を導入する場合でも、現在でも稼働している古い CADツールやCAD データとの連携が必要な状況が生じています。

そしてこれに対して今、新旧のCADツールやこれらのユーザ、そして蓄積されたこれらのCAD データを「結ばれるべき点」としてとらえ、その間を線で結ばなくてはならないのではないかと考え始めました。

そこで、「時空を越えて縦横無尽に線を張り巡らす」というフレーズがふと脳裏に浮かんだのですが、とりあえずはまず今までの記憶をたどり、アルティウム/プロテルが提供してきた歴代の商品をご紹介することにしました。

これらをご覧いただくことにより、取引先が古いバージョンを使っている場合などには、それがおおよそどんなものなのか?ということや、どのような付き合い方をすれば良いか?ということを知る手がかりになるかも知れません。

プロテル DOS製品の記憶
初代 Windows 版プロテル
2代目 Windows 版プロテル
3代目 Windows 版プロテル
Protel 98
Protel 99 と Protel 99 SE
Protel DXP と Protel 2004        ・ プロテルのはじまり

Protel P-CAD OrCAD PADS 懐古録に続く

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Protel DXP と Protel 2004

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大量に投入された新技術により飛躍的な進化を遂げた革新的な製品

Protel 99 のリリースが 1999年 3月で、Protel DXP のリリースが2002 年の年末ですので、その間は 4年近くあいています。アルティウムではその間いろいろな事がありました。

この間に起こった主な出来事として、ACCEL Technologies, Inc(P-CAD)の買収 、Metamor Inc(FPGA論理合成技術)の買収 、TASKING グループの買収(エンベッデッドソフトウェア開発環境)、プロテル(Protel International Limited)からアルティウム(Altium Limited )への社名変更 などがあげられます。

このようにこの間には、有力企業の買収がアグレッシブに行なわれています。、そしてこれらは「次世代の Protel ファミリーの開発のために行なわれた」と言えます。またこの企業買収よる最も大きな成果は、FPGA ハードウェアとソフトウェアの開発ツールの技術を手に入れたいれたことでした。

そしてProtel DXP ファミリーはこれらの企業買収で取得した技術の投入に加え、より洗練された統合環境であるDXP プラットフォームを導入することによって開発されました。その結果この新しい Protel DXP はただ単にツールの種類を増やしただけのものではなく、ツール間における相互の緊密な連携が可能な一体化された製品になりました。しかしその一方で、従来の回路図エディタや PCB エディタなどの、個別ツールの販売が取り止められました。

この流れはその後の Protel 2004 世代にも受け継がれ、アグレッシブに開発が続けられました。そして Nexer-Protel 2004 で基板設計とFPGA ハードウェア/ソフトウェアを一体化した統合開発環境が完成します。そしてさらに改良が続けられ、Altium Designer 6 へと進化していきまます。

このように、大きく進化した Protel DXP なのですが、市場への浸透は意外に緩やかなものでした。良くも悪くも根を張るほどに定着した Protel 99 SE との違いがあまりにも大きすぎたというのがその原因なのではないかと思います。これを補うためか、Protel 99 SE は Protel DXP はおろか Protel 2004 がリリースされた後もしばらく販売が継続されました。

プロテルは 1995 年のEDA/Client の導入をかわきりに統合一直線に進んできましたが、それもついにここまで来たか...というのが正直な感想です。 技術を持った企業を買収すれば機能を増やすのは簡単なことかも知れませんが、それを統合し魅力的な商品にまとめ上げる事は至難の業です。それを可能にしたのが新しく導入された DXP プラットフォームです。そしてそのコンセプトと基本技術がすでに 1995 年のEDA/Client で確立されていたという事実を思い起こし、その先見性と開発力に今まさらながら驚いています。

Protel DXP およびそれ以降の製品については今でもWEB サイトから、多くの情報が入手できますので興味のある方はご覧下さい。

プロテル進化論
http://jono.jp/story/protel_se2004.html
Protel から Altium Designer 6 へ
http://jono.jp/story/altium_designer.html
Protel DXP サポートドキュメント
http://www2.altium.com/community/support/jpproteldxpguide/
Protel 2004 サポートドキュメント
http://www2.altium.com/Community/Support/LearningGuideJapanese/

(注) 内容は記憶に基づいたものであり、不正確な部分が含まれている可能性があります。

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Protel 99 と Protel 99 SE

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ポータビリティの良い DDB 統合データベースが導入されたロングセラー製品

1999年 4月に無印の Protel 99 がリリースされ、同年の12月に99 SEにアップデートされた後、2005年の3月末までの6年間にわたり販売が続けられました。後継の Protel DXP や Protel 2004 がリリースされた後も販売が続けられた超ロングセラーモデルです。

この製品は以前の Prtoel 98 のマイナーチェンジではなく、統合プラットフォームが大きく変更されされたほか、新たに伝送線路シミュレータが追加された全くの新製品です。

Proel 99 の統合環境は EDA/Client から Design Explorer に変更され、これに合わせて Microsoft Jet エンジン を利用した新しい統合データベースが導入されました。この新しいデザインデータベース(DDB)は全てののデザインデータを一つのデザインデータベース保存できるため、大変ポータビリティが良い反面、ファイルが壊れた場合全てのデータを失うという危険性もありました。またJet エンジンのアクセスコントロール機能を利用したプロジジェクト管理機能が備えられていました。

この新しい統合環境には短所もありました。ことに手軽に使える回路図エディタを求めている人にとって Design Explorer とDDB ファイルはいかにも大げさすぎるように思われました。

この DDB デザインデータベースについては私どもの社内でも賛否両論があり、いくどもその有効性についての議論がかわされました。しかし製品の信頼性が向上するにつれ急速にその評価は高まり、その有効性を疑問視する声はしだいに聞かれなくなりました。

Protel 99 に新たに加わった伝送線路シミュレータは旧 INCASES Engineering 社の SI Workbench を組み込んだもので、現在のAltium Designer 6 と同等のものです。また、アナログ/デジタル混在シミュレータは以前用いられていたDolphin Integration 社の SMASH から Microcode の XSpice 3f5 ベースのものに変更されました。

また回路図エディタ、PCB とも編集機能の改良は旧製品に対する上位互換が維持されており、旧製品のユーザであれば違和感無く使用できました。また部品シンボルに Unique ID 属性が追加され、デザインデータ間相互のリンクが強化されました。これにより回路図とPCBとの間のデータの受け渡しがネットリストファイルではなく、Update - PCB/Schematic のコマンド操作によって行なわれるようになりました。またこの製品から、ロングファイル名と日本語ファイル名がサポートされたことも見逃せません。

そして1999年12月の Protel 99 SE へのアップデートでは、それまで要望が強かった層数の追加が行なわれ、信号層が 16 から 32、内層プレーンが 4 から 16、メカニカル層が 4 から 16 に増やされました。この SE へのアップデートはマイナーチェンジとして扱われ、Protel 99 ユーザに無償提供されました。

また、この製品はライセンスがピア・トゥ・ピアでフローティングするように作られており、全てのユーザにフローティングライセンス仕様の製品が提供されました。また、統合版を購入しても Schematic/PCB 等の個別ツールのライセンスをバラバラに使用できましたので、設計者が作業を分担する場合には大変便利なものでした。

マーケティング面では、より明確に統合ツールへの方向性が打ち出されました。例えば回路図エディタの商品名は、従来の Advancrd Schematic 98 から Protel 99 Schematic に変更され、個別の回路図エディタ は Protel 99 統合ツールのサブセットとして位置付けがさらに明確にされました。

長期間販売されたこの Protel 99 SE には極めて多くユーザが存在しますので、Altium Designer ではProtel 99 SEのデザインデータベース(DDB)と個別ファイルとの互換性に対しては、磐石なサポートが提供されています。

なおアルティウムジャパンではこの製品のサポートを終了しましたが、サポートドキュメントの提供は続けられています。
http://www2.altium.com/Community/Support/JPProtel99SEGuide/

(注) 内容は記憶に基づいたものであり、不正確な部分が含まれている可能性があります。

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Protel 98

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統合化への方向性を明確にした EDA/Client の完成形

名前のとおり 1998年 2月にリリースされた、Protel V3 の改良版です。このバージョンでは、今まで独立していた Advanced Route 3 が EDA/Client のサーバとして組み込まれた事以外には目立った機能の変更は行なわれず、プログラムの32ビット化とバグの修正にに焦点が絞られました。

その結果、Protel V3 よりも安定かつ高速に動作するようになりました。表面的には極めて地味な新バージョンであるにもかかわらずその堅牢さが受け入れられ、10年たった今でもまだかなり使われています。

一方、マーケティング面においてはこのリリースを機に個別ツールから統合ツールへの転換が開始されました。商品名にもこの方針が反映され、統合版にProtel 98 という社名を冠した商品名が与えられました。そしてこれを主力商品とし、個別ツールはProtel 98 のサブセットという位置づけになりました。。

また、個別ツールから統合版 Portel 98 へのアップグレードを安価に設定することにより、統合版 Portel 98への誘導が図られました。その結果 Portel 98 へのアップグレードの注文が殺到し、リリース後2ヶ月間のPortel 98の売上げはそれまでの半年分に相当する金額に達するほどでした。(日本国内の状況)

このように Protel 98 のりリースでは統合ツールへの転換のために、マーケティング面での施策が施されました

一方個別商品に目を向けて見ると、競合商品である OrCAD Capture の改良が進んだことで、回路図エディタの選択枝が広がってきているという状況でした。Windows版回路図エディタはプロテルしかないという時代はすでに過ぎ去っており、回路図エディタの売上げを維持するためには何らかの施策が必要な状況でした。

なお Portel 98 のファイルフォマットは Protel V3 から変更されていません。この Portel 98 で使用されているPCB 3 フォーマットは、現在のAltium Designer 6でも読み書きがサポートされていますので、両者の間で PCB データを双方向でやり取りするこができます。

また Protel 98 についてはまだ WEB 上にコンテンツが残っていますので興味のある方はご覧下さい。

Protel 98 製品仕様
http://www.anvil.co.jp/protel98/protel98.html
Protel 98 レポートドキュメント
http://www2.altium.com/Community/Support/JPProtel98Guide/

(注) 内容は記憶に基づいたものであり、不正確な部分が含まれている可能性があります。

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3代目 Windows 版プロテル

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EDA/Client 統合環境を導入した第3世代の Protel for Windows

3代目 Windows 版の Advanced Schematic 3 と A dvanced PCB 3 は、従来の Ver.2 の延長線上で改良が加えられたものではなく、 EDA/Client という斬新なシステムをベースにして作り変えられた新製品です。

EDA/Client はそれまでバラバラに提供されていた複数のEDAツールを一体化するための統合環境であり、これにより異なる種類の EDA ツールを共通のユーザインタフェイスで使用することを可能にするものです。

たとえば従来のプロテル製品では、回路図入力とPCBレイアウトでは、別々のプログラムを起動することが必要でしたが、この新しいシステムでは EDA/Client を起動するだけで回路図入力とPCBの両方の作業が可能になります。このことは複数の種類の仕事をする場合にもツールの使い分けが不要になることを意味します。このシステムはその後も改良が続けられ(EDA/Client → Design Explorer → DXP プラットフォーム) Altium Designer 6 でも使用されています。

このシステムの導入に際しては、開発初期の段階から関係者に対してコンセプトの説明やプロトタイプによるデモが行なわれました。初期の段階では EDA/OSという仮称が与えられており、まさにベンダーの垣根を越えた共通のプウラットフォームを目指していました。私どもはこのコンセプトの先見性に感銘を受け、あらためてプロテルの将来性を確信しました。そして日本のユーザに対して製品リリースの 1 年近く前から EDA/Client のコンセプトの訴求を始めました。

実際に製品がリリースされたのは、Advanced Schematic 3 が1995年 9月で、OrCAD Capture の最初のバージョンのリリースとほぼ同時期でした。 また Advanced PCB 3 は1997年 2月であり、当初の予定より 1年以上も遅れユーザの皆様には多大のご迷惑をおかけしました。

EDA/Client はツールを統合するだけでなく、カスタマイズ機能も提供しています。このカスタマイズ機能により、メニューの日本語化が可能になったほか、オルグシステムズからはマクロ言語を使ったライブラリプレーサが提供されました。

エディタの編集機能の改良については、Schematic と PCB ではアプローチが異なりました。Schematic 3では編集機能の改良を最小限にとどめ EDA/Client によって提供される機能によって新規性を創出していたのに対して、PCB 3 では編集機能そのものに大幅な改良が加えられていました。

PCB 3 はルールドリブンのシステムに変更され配線機能もインテリジェントに改良されました。しかしその反面非常に動作が遅くなりました。当時はハードウェアの進化とソフトウェアの重量化がいたちごっこをしているような状況でしたが、PCB 3 の重量化はハードウェアの進化で補うことはできませんでした。

当時のWindows プラットフォームには、このシステムは少し重すぎたように思います。このため描画レスポンスや安定性においては以前の Ver.2.x に一歩譲る面はありましたが、新しい統合環境が受け入れられユーザの数は右肩上がりに増えてゆきました。

このAdvanced Schematic 3 と A dvanced PCB 3 の投入は営業的にも満足すべきものでしたがそれ以上に、現在でも使い続けれれている先進的な統合環境と、ルールドリブンシステムの導入に成功したことの意味は大きいのではないかと思います。

なおこのPCB 3 フォーマットは、現在のAltium Designer 6でも読み書きがサポートされていますので、両者の間で PCB データを双方向でやり取りするこができます。

また Protel V3 についてはまだ WEB 上にコンテンツが残っていますので興味のある方はご覧下さい。
Windoes PCB-CAD 導入ガイド
http://www.anvil.co.jp/protel3/protel3_01.html
Protel V3 サポートドキュメント
http://www2.altium.com/Community/Support/JPProtelV3Guide/

(注) 内容は記憶に基づいたものであり、不正確な部分が含まれている可能性があります。

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2代目 Windows 版プロテル

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実用性が大きく向上した 2 代目 Protel for Windows

1994年の2月から3月にかけてリリースされたWindows for Windows 2.0 は、以前の1.x の改良版と位置づけられる製品であり、この製品の出現によりそれまでの努力が実を結び始めました。

この新しい回路図エディタ Advanced Schematic 2.0では、TrueType による日本語、タイトルブロックのカスタマイズ、他のWindows アプリケーションとのクリップボード経由でのコピーアンドペーストが可能になりまそた。また Advanced PCB 2.0 では、Porigon Pour の改良、パッドスタックのサポート、画面上でのオンライン編集機能、PADS 2000 の読み込みなどが実現しました。またリリース後まもなく、Schematic と PCB の両方ともドングルによるコピープロテクトが廃止され、なんら手を加えること無しに PC 98 環境で使用することが可能になりました。

当時の PC プラットフォームはまだまだひ弱でしたので、安定性や処理速度に不満が残りました。しかし上記のような基本機能の改良により、実用性は大幅に向上しました。

当時のラインナップはつぎのとおり。
・ Advanced Schematic 2.x 120,000 円 - 148000 円
・ Advanced PCB 2.x   398,000 円
・ Professional PCB 2.x   198,000 円
Advanced Schematic は価格改定とキャンペーンによる価格変動がありましたが、120,000 円で販売されていた時期が最も長かったように記憶しています。またProfessional PCB はAdvanced PCB から自動機能を省いた製品であり今思うと大変お買得な製品でした。

競争相手は、Schematic が OrCAD 、PCB が Tango という構図でした。しかし OrCAD には Windoiws 版はなく、Tango は Protel より出遅れていたにもかかわらず大変高価でした。このため、プロテルはシリアスな競争にさらされることはなく、Windows CAD のリーディングブランドとしての地位を得ることができました。

このポジションをより確固たる物にするため、広告宣伝の強化のサポート製品の整備を進めました。トランジスタ技術誌への広告は、従来の1ページから2ページ見開きに増やしました。広告やカタログのレイアウトにおいても、当時のプロテルのカンパニーカラーである黄色を多用し極めて目立つような配色にこころがけました。

またサードパーティからもプロテルをサポート商品が次々と現れ、最終的には次のようなものが出揃いProtel for Windows 2.x の販売を後押ししました。

・ FontMan
・ オルグシステムズの TechLib-SCH 回路図シンボルライブラリ
・ CAD サービスの回路図シンボルライブラリ
・ 光明電子の PCB フットプリントライブラリ
・ 部品表太
・ RSI トランスレータ
・ MaxRoute
・ CCT SPECCTRA
・ HyperLynx BoardSim
・ ECAM / CAM350
(上記には1.0世代から存在していたものも含まれています)

Protel for Windows 2.x は 次の Ver.3 がリリースされるまでの間、0.1 刻みの小刻みなリビジョンアップが繰り返されました。特に PCB では頻繁にアップデートが行なわれ、その結果バージョン番号は 2.8 まで達しました。またこのPCB 2.8フォーマットは、現在のAltium Designer 6でも読み書きがサポートされていますので、両者の間で PCB データを双方向でやり取りするこができます。

プロテル製品の販売はこの Protel for Windows 2.x のリリースによって急速に伸び、浜松の大手電子楽器メーカに大量にも採用されるなど、旧テクスパート地元のお客さまにもご愛顧いただきました。

Protel for Windows 2.x は名実ともに 「Windows のプロテル」の地位を得、 Schematic 3(1995年 9月) とPCB.3 ( 1997年 2月)がリリースされるまでの間大量に出荷されました。

(注) 内容は記憶に基づいたものであり、不正確な部分が含まれている可能性があります。

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初代 Windows 版プロテル

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世界初の Windows PCB ツール

プロテルはDOS 版 PCB-CAD の開発を打ち切った後、1991年に世界初の Windows PCB ツールとして Advanced PCB 1.0 をリリースします。

当時私どもはPADS-PCB ツールの販売が主力であり、まだプロテルの輸入販売元としての業務を行なっていませんでした。私どもが輸入販売元としてプロテルの Windows ツールの販売を開始したのは、1994年1月の EDA TechnoFair からです。しかし主力においたのははPCB ツールではなく、回路図エディタの Advanced Schematic でした。

プロテルの代理店になることを決めたのはこの前年の1993年の末です。Wescon で展示されていたAdvenced Schematic に感銘を受け即座に代理店になることを決断しました。当時の私どもは Advenced Schematic が業界標準になることを確信しており、プロテルビジネスに投資する事に対して何の懸念もありませんでした。

この Advenced Schematic では、 OrCAD SDT(DOS)のWindows 版というコンセプトが明確に打ち出され、そのコンセプトが適確に実現されていました。また何よりも端正な面構えとWindoes 準拠のセンスの良いユーザインタフェイスにいたく感動し、もうこれ以外には何も目に入らないというほどの惚れ込みようでした。一方 PCB エディタの Advanced PCB はこの頃すでに Ver. 1.5 にバージョンが上がっていましたが、いまいち魅力薄の印象を拭えませんでした。

とにもかくにも私どもは、このプロテルの投入を機に積極的な販売戦略を策定/実行し、 PCB 設計業者から CAD 販売業者への転換を始めました。いま当時の状況を振り返ってみると、その後のプロテルビジネスの骨格がこのころ確立されたことがわかります。

・ VAR 販売チャンネルの設定
・ 流通販売チャンネルの設定
・ 雑誌広告を毎月掲載
・ 年 4回のニュースレター(Tech Express)の定期送付
・ 年2回のトレードショーへの出展
・ 回路図とPCBの国産部品ライブラリの提供
・ カタログの大量配布

とにかく OrCAD という巨人が前に立ちはだかっていたわけですから、OrCAD の Windows 版が出る前にいかに知名度を上げ、販売実績を残すかということが最重要課題でした。当時の私どもには「何が何でもプロテルを公衆の面前に露出させる」という、執念めいた想いがあったように思います。

これらの戦略の実行にあたっては、資金不足以外に大きな障害はありませんでしたが、いくつか想定外のこともありました。特に流通チャンネルを通じて全国にカタログを配布する場合、最低でも 10,000枚くらい用意しないといけないことがわかり、流通販売チャンネルの設定後、それまでの 10倍くらいの量のカタログが必要になりました。

当時はまだ誰もプロテルの名前を知らないわけですから、微々たる売上げに期待するよりもまず、メディアへの物量の投入によりブランドを露出させ知名度を上げることが先決でした。雑誌広告やカタログにはProtel のロゴを目立たせると共に Advenced Schematic が OrCAD互換であることを明示し、OrCAD のWindows 版というコンセプトを強く訴求しました。そしてこのような営業努力の結果半年後くらいには、いくらかプロテルの存在が認知され始めました。また製品の能力に対してもおおむね良好な評価を得ることができ、少量ながらも着実に売れ始めました。

余談になりますが、このころ国内最大手の PCB-CAD ベンダー様から Advanced Schematic の引き合いがあり、研究用見本として 1本お買い上げいただきました。 開発/設計現場だけでなくCAD 業界にもプロテルの存在が認知され始めたことを実感させる出来事でした。

機能面においては Advanced Schmatic 1.0 の特徴である OrCAD回路図とライブラリの読み込みと書き出し機能、およびWinmdows に準拠した洗練されたユーザインタフェイスは大変好評でした。しかし残念なことに、回路図上に日本語を書き込むことができませんでした。

一方 Advanced PCB 1.5 では、32ビットのデータベースによる 0.001 mil の分解能の実現と、無制限のデータベースサイズのサポートにより、極めて精細度の高い基板や大規模な基板の設計が可能になりました。しかし、パッドスタックがサポートされていないことや、Polygon Pourを同一ネットのパターン上に重ねて配置できない点など、プロフェッショナルな用途には不十分な部分も残っていました。

また、Advanced Schmatic および PCB の双方ともドングルによりプロテクトが行なわれていましたので、IBM PC 用ドングルにアクセスできないPC98 環境では使用することができませんでした。このためサードパーティからPC98 用プロテクトキーインターフェイスボードを調達することにより、PC98 環境での動作を実現しました。

当時このAdvanced Schmatic および PCB には Protel for Windows というファミリー名が与えられました。この初代 Protel for Windows は当時のひ弱なプラットフォームでは充分な能力を発揮することはできませんでしたが、Windows のトレンドに対する整合は完璧でした。このため、 「Windows のプロテル」というブランディングには最適な商品であり、Windows CAD 市場に絶好のコンデションで船出することができました。

(注) 内容は記憶に基づいたものであり、不正確な部分が含まれている可能性があります。

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プロテル DOS製品の記憶

Windows 前夜の製品である、プロテルのDOS版PCB ソフトウェアに関わる記憶をたどってみました。

Windows PCB-CAD の先駆者として知られるプロテルも、1991年に最初の Windows 製品である Advanced PCB 1.0 .がリリースされる前は、DOS製品を開発し販売していました。

1996年に最初の DOS 製品がリリースされた後 1989年にDOS 世代最後の製品である AutoTrax に至るまでにいくつかのバージョンが存在しますが、 AutoTrax 以前には日本に代理店はありませんでした。 プロテルはこの AutoTrax のリリースに合わせて日本に代理店を設定し、日本市場への参入に際してIBM-PC 版だけでななく PC-98版も用意しました。

Windows 版の Advanced PCB がリリースされた後も、Autotrax は DOS Pack の名称で販売が継続されました。DOS Packは、AutoTrax と DOS Schenatc がセットにされたもので、価格は 98,000円と大変安価でした。また、リリース直後のAutotrax にはドングルと呼ばれるセキュリティデバイスによるコピープロテクトがおこなわれていましたが、1993年に販売が開始された DOS Pack以降 このドングルは取り払われました。

また、AutoTrax の前に PCB 3という PCB パッケージがあり、これが Accel 社に OEM 供給され Tango Series I として販売されていました。その後Accel 社は自社開発によるTango Series I I に移行します。この Tango Series I I と Autotrax との間には一見大きな違いは無いように見えました。しかしTango Series I Iには Autotrax には無いマニュアルポリゴンの配置機能がありましたので、アナログ基板設計では、使えるか使えないかの判断の分かれ目になり得るくらいの大きな差があったかも知れません。

余談ですが現在、このAutotrax と その直前のバージョンである Easytrax(おそらく"PCB3"="Tango Series I" ="Easytrax")はフリーソフトとしてアルティウム社から無償で提供されており、以下のページからダウンロードできます。

http://www.altium.com/Community/Downloads/

また、Autotrax はその後、当時のMicrocode社にライセンスされます。そしてMicrocode社によってWindows に移植され、TraxMaker という商品名で販売されます。このTraxMaker は機能および PCB ファイルとも Autotrax 寸分違わず、まさに Windows 版 Autotrax そのものでした。

当時のDOS製品は、データ幅およびアドレッシングの両方で 16ビットの制限を受けていました。Autotrax はレイアウトデータおよびプログラムとも 16ビットでしたが、EMS がフルサポートされていたので大規模な基板の設計もできました。一方、ほぼ同時期に日本に上陸した PADS は レイアウト後のフットプリントデータを EMS エリヤに置けず、大規模を設計することができませんでした。

その後 PADS はこの制限から逃れるため、 PharLap の 386DOS-Extender を利用した 32 ビット版である PADS 2000に移行します。一方プロテルにも Phenix というコードネームの次世代 DOS プロジェクトがあったようでしたが、結局DOS版はこれで打ち止めにになり、これ以後 Windows にフォーカスされることになりました。そして1991年にリリースされたのが世界で最初の Windows PCB ツールとして有名な Advanced PCB です。 

このWindows 版への移行の後も Autotrax とは双方向の互換性が保たれており、Advanced PCB 2.8まではAutotrax ファイルの読み込みはもちろんのこと、保存もできたように記憶しています。

後にプロテルの国内販売元になったテクスパートは、当時 PADS を使って基板設計を始めたばかりであり、プロテルと運命を共にすることになろうとは夢にも思っていませんでした。

(注) 内容は記憶に基づいたものであり、不正確な部分が含まれている可能性があります。

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