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2008年02月20日

標準ガーバーと拡張ガーバー

(旧プロテル探検隊からの加筆/転載)

PCB 設計は回路設計の最終工程ですので、設計が終わった後そのデータから直接製造データを出力します。いわゆる CAM 出力と呼ばれる工程があり、アートワークフィルムを作成するためのガーバデータと、穴あけのための NC データの出力を行います。

この、PCB のアートワークフィルム作成工程は印刷物の場合と良く似ていますが、データの受け渡しにはガーバという PCB 独自のフォーマットが用いられます。このガーバーフォーマットは標準化されてはいるものの、ある程度の自由度が許されていますので、書き出し/読み込み時の条件設定の不一致によって、正しいアートワークイメージが再現出来ない場合があります。このため設計側と製造側との間での正しいデータの受け渡しのためには、いくらかの予備知識が必要になります。

そこで、このガーバーフォーマットがどのようなものであるかについて、簡単に紹介させていただきます。

標準ガーバーと拡張ガーバー
(DesignWave誌 2005年 4月号からの加筆/転載)

ガーバーは、PCB のアートワークフィルムの作画に用いられるグラフィック・フォーマットです。もともとはフィルム作画機(フォトプロッタ)のメーカである Gerber 社で開発され社内規格として使用されていたものです。これがデファクト・スタンダードとして広く普及したため、1979年にEIA (米国電子工業会)で RS-274D として規格化されました。現在、量産用の PCB フィルム作成には必ずと言ってよいほど、このガーバーフォーマット(拡張されたものも含む)が用いられています。

この RS274-D ガーバーフォーマットは、アートワークを「点」と「線」の組み合わせだけで表現します。RS-274D ガーバーデータには作画するすべての「点」と「線」の座標が示されています。しかしこの「点」と「線」の形状とサイズの定義は含まれておらず、そのかわりに D コードと呼ばれる作画ツールの番号が示されています。このため実際に作画する場合には、このDコードを作画に使用するツールの形状とサイズに置き換える必要があります。

初期のフォトプロッタでは、アパーチャと呼ばれるシャッターのようなもので光束を制御して、作画の形状とサイズを決定していました。このため作画ツールをアパーチャと呼び、そのサイズを示すリストをアパーチャ・テーブルと呼んでいます。このしくみはペンプロッタに置き換えて考えるとわかりやすいと思います。アパーチャはプロッタのペンに相当し、そのペン先の形状と太さがアパーチャ・テーブルに示されます。

この RS274-D で作画する場合にはガーバーデータだけでなく、必ずこのアパーチャ・テーブルが必要になります。また、RS-274D ガーバーには面を表現する手段がありませんので、ベタで塗りつぶす部分には、多くの「線」を並べなくてはなりません。このため、基板の配線パターンが単純であってもベタエリアが多いとデータ量が激増します。

このように、RS-274D ガーバーにはいくつか不便な部分があるため、その改良版として、ガーバー RS-274Xフォーマットが開発されました。これには、アパーチャ・サイズの定義が含まれていますので、別個にアパーチャ・テーブルを用意する必要はありません。また、「点」と「線」だけではなく「面」の記述が可能ですので、データ量が少なくてすみます。この RS-274X はEIA規格ではなくガーバー社(Barco Gerber Systems Corporation)の社内規格です。しかしデータの受け渡しが簡単になることから、現在では RS-274D よりも RS-274X のほうが多く使われるようになりました。

RS-274X は RS-274D を改良したものですので、両方ともガーバーフォーマットには違いありませんが、混同を避けるために RS-274D を標準ガーバー、RS-274X を拡張ガーバーと呼んでいます。

ガーバーデータを再現する場合には、ファイル読み込む前にそれが標準ガーバーなのかそれとも拡張ガーバーなのかを判別する必要があります。ガーバーファイルを受け取った時にアパーチャ・ファイルが添付されていなければ、それは拡張ガーバーのはずです。しかし手違いで添付されなかったという場合もありますので、一度ファイルの中身を覗いてみるとよいでしょう。通常はASCIIファイルですので、テキストエディタで読むことができます。

拡張ガーバーの場合には、先頭付近に「%」で区切られたパラメータが何行か並んでいるはずです。これは、拡張ガーバー独自のものですので標準ガーバーにはありません。もしこれがなければ、標準ガーバーですので、相手に対してアパーチャ・ファイルを請求することが必要です。

274x.jpg
拡張ガーバーでのデーターの受け渡しはトラブルが少ないのでフォーマットに関する知識はあまり必要ありません。しかし標準ガーバーを使う場合にはデータを正しく再現するために、多少の知識が必要になる場合があります。以下のページでガーバーフォーマットが詳細に解説されていますので、一度ご覧になることをお奨めします。

長野県情報技術試験場 - ガーバーフォーマットとガーバー支給時の注意点
http://www.techno-qanda.net/dsweb/Get/Rendition-14166/

長野県情報技術試験場 - 技術の広場 ガーバーフォーマット [解説]
http://www.nagano-it.go.jp/joho/kaisetsu/gbf_s.pdf

長野県情報技術試験場 - 拡張ガーバーフォーマットの解説
http://www.nagano-it.go.jp/joho/kaisetsu/ext_gerber.pdf

Barco Gerber Systems Corporation Engineering Services Department
RS-274X Format User’s Guide Part Number 414-100-014 Rev C
September 21, 1998

http://ohm.bu.edu/~hazen/my_d0/std/rs274xc.pdf

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